VR

VRが人財育成・研修にもたらす本当の意味とは?事例から紐解くVR研修の効果

2021年にFacebookがMetaに社名変更をし、より一層話題になってきたVR。VRを使った研修や、チームビルディングのサービスも増えてきました。
なぜこれまでにもVRが話題になっているのか?そして、VRが私たちの生活にもたらすものとは?
この記事では、VRを使った研修事例を交えながら、VRがもたらす人財育成の効果について解説をしていきます。

1.そもそもVRとは?

VRとは、Virtual Realityの略称で、「仮想現実」を意味します。一般的に、Meta(旧Facebook)が製造販売しているOculusシリーズやWindowsが製造販売しているMRシリーズを代表的とするVRヘッドセットに表示される仮想現実を指すことが多いです。

VRの特徴としては、”世界観への没入感の高さ”が挙げられます。VRヘッドセットもどんどん進化を遂げており、仮想現実の世界で起こる体への衝撃をそのまま受けることができるような機材も生まれています。

2.VRを使った研修事例と効果 -ウォルマートの事例-

VR研修の事例で最も有名なのが、ウォルマートです。

世界最大のスーパーマーケットチェーンのウォルマートでは、VRを活用した研修を導入し、合計17,000台のOculusを購入したことがニュースで大きく取り上げられました。

ウォルマートがVR研修を導入した背景には、以下の理由が挙げられます。

①どこにいても同じ体験が可能

 多店舗展開をしているウォルマートならではのメリットです。これまでの研修では、トレーナーによってばらつきがあったり、お店によって指導方法がことなったりと均一的な研修を実施することが困難でした。しかし、VR研修を導入したことで、どこにいても同じ体験ができ、学びのばらつきが解消されるようになります。

②OJTさながらのバーチャルリアル体験

 百聞は一見に如かずということわざがあるように、スキルや知識を身につけるには、まず実践をしてみて、そこから学ぶことが有効になります。仮想現実の中で、ウォルマートの実店舗を360度で撮影した映像をもとに、「私であればこうする」や「こういうやり方もある」といった感じに、失敗を恐れずケースに取り組めるのもVR研修の醍醐味です。

ウォルマートのVR研修の効果

上記のようにVRを使った研修は、人財育成の新たな可能性を秘めています。
実際にウォルマートの事例では、VR研修に参加した従業員は、通常のトレーニングと比較して、満足度が30%も向上し、さらに70%の従業員が高いパフォーマンスを発揮したという絶大な効果を出しています。

3.VRが生み出す認知の変化 -超認知-

もう少し、VR研修が人財育成の分野でもたらす効果について深掘りをしてみたいと思います。VRでは、現実は決して起こらない(起こる可能性が極端に低い)ことを仮想現実の世界で作ることが可能です。

例えば、”空を飛んだり”、”宇宙で生活したり”といったことです。
これは、ゲームをイメージするとわかりやすいと思います。

RPGゲームでは、あたかも自分が世界を救う勇者のような感覚を得て、武器を装備して、仲間と出会って、魔王を倒しに行く。レベルが上がるごとに優越感に浸る。

もちろん、このような世界観をVRでも作ることが可能で、既にたくさんのコンテンツが揃っています。

ただ、VRの世界はテレビゲームと少し違い、より一層、現実と仮想現実の世界の垣根が”わからなくなってくる”という特徴があります。これは現実で起こっていることなのか、それとも仮想現実の中で起こっていることなのかが曖昧になるということです。

例えば、アメリカで行われた研究で、普段痩せていて、非力な少年にVRをつけてもらい、あたかも自分の体をムキムキだと錯覚させてみるという実験がありました。結果、普段絶対に持ち上げることができなかったダンベルをいとも簡単に持ち上げることができるようになりました。

これは「超認知」と呼ばれます。現実世界では決して認知しえなかったことが、認知されるようになるということです。
VRがこの「超認知」を生み出すことができるツールの一つになるということなのです。

4.VRが人財育成・研修にもたらす本当の意味とは?


話を研修に戻すと、人財育成や研修もこの「超認知」を設計することで、新しい能力開発ができる可能性があります。

先ほど事例に出したウォルマートでも、「接客が上手な従業員が実際お客様とどのような会話をして、どのようなサービスをしているのか」を他の従業員にも”擬似体験”してもらう。それによって、これまでは体験しえなかった最高のサービスを提供した感覚になって、その従業員たちのサービスの質が変わる。

これも「超認知」がもたらす一つの効果です。

一般的なスキル研修に置き換えてみると、自分に自信がなく人前でプレゼンをするのが苦手な人が、TEDのような大観衆の前でプレゼンをしてみる。するとすごい反応が返ってくる世界観をVRの世界で演出する。それが自信となっていつも以上にハキハキとプレゼンができるようになる。



チームビルディング研修でも、人間関係があまり良くないチームの中で、それぞれの好みのアバターをつけてもらい会議をしてみる。すると「あれ?意外とメンバーそれぞれ面白い側面を持っているかも」といった感じで深い相互理解をもたらすことも。

これらのように、VR(仮想現実)の中で非現実的な体験をすることで、現実社会でも活かせる能力開発やチームビルディングを実現させることができるのです。

つまり、VRが人財育成・研修にもたらす本当の意味とは、従来のOJTやOFF-JTだけでは体験させることができなかったことを、デザインすることができ、認知をポジティブに変化をさせることで、新たな才能や行動を引き出すことができるようになるということだと筆者は考えます。

5.まとめ

いかがでしたでしょうか? 今回はVRが人財育成・研修にもたらす本当の意味について語ってきましたが、VRを単なるゲームのハードウェアとして捉えず、自社に当てはめたらどのようなことができるだろう?と考えてみても面白いですね。

この記事を書いた人

納土 哲也

岐阜県飛騨高山市生まれ。
人財育成・組織開発のコンサルタントとして、100社以上の企業の人財育成・教育体系の構築を手がける。2014年にチームビルディング事業の事業責任者として立ち上げに従事。
2018年に本場のチームビルディングを学ぶため、オーストラリアへ単身留学。現地のチームビルディング企業で、ゲーミフィケーションをベースとしたチームビルディングメソッドを学び、2019年に帰国。2021年に株式会社Teamieを創業。

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