1on1の進め方|外資系・スタートアップ流実践ガイド
はじめに
「1on1の進め方を変えたいのに、毎回『特に問題ありません』で終わってしまう」——そんな経験はありませんか?
時間を確保して向き合っているのに、表面的な報告で終わる。本音が引き出せない。そのもどかしさを感じているマネージャーは、外資系・スタートアップにも多くいます。
この記事では、今日からそのままコピーして使えるアジェンダテンプレートと、部下の本音を引き出す質問設計の型をお伝えします。
Googleが実施した「Project Oxygen」の研究では、優れたマネージャーの第1条件は「良いコーチであること」と定義されています。また、Gallupの調査によると、マネージャーと定期的に会話している社員のエンゲージメントスコアは、そうでない社員の約3倍高いとされています。
1on1は、チームの力を引き出す最も身近な仕組みです。一緒に設計し直していきましょう。
1on1が「進捗報告」で終わる5つの理由
1on1を実施しているマネージャーの多くが、こんな感覚を持っています。「場を設けているのに、毎回同じ流れで終わってしまう」というものです。
問題は意欲や熱量ではなく、「設計」にあります。何を話すか・どう問いかけるかが整理されていないまま場を持つと、自然と業務の進捗確認に流れていきます。
よくある失敗パターン5選
- マネージャーが8割話す「報告会」になる:部下に質問するつもりが、気づけば自分が解決策を話し続けている状態です。
- 「困ってることある?」だけで終わる:クローズドクエスチョン(はい/いいえで答えられる質問)に頼りすぎると、部下は「特にないです」と答えやすくなります。
- 記録を取らないため次回に引き継げない:毎回ゼロから話が始まり、信頼関係の蓄積がリセットされてしまいます。
- 心理的安全性が低いまま「本音を話して」と求める:環境が整っていない状況で「何でも言って」と促すのは、逆効果になることもあります。
- 毎回同じアジェンダでマンネリ化する:部下が「また同じ話か」と感じ始めると、準備してこなくなります。
「良い1on1」をGoogleが定義している
Googleは2009年、「Project Oxygen」という社内研究で、優れたマネージャーに共通する8つの行動を特定しました。その第1位が「良いコーチであること」——つまり、部下との対話を通じた支援です。
この研究が示すのは、「管理」より「対話」がチームを強くするという事実です。Gallupの調査でも、マネージャーとの定期的な会話がある社員は、エンゲージメントが約3倍高いとされています。1on1は単なるチェックインではなく、チーム力を左右する重要な場なのです。
1on1の基本設計:頻度・時間・場所の「外資系標準」
「週1回がいいのか、隔週でいいのか」「30分か1時間か」——1on1の設計でまず迷うのがこの問いです。
正解は組織のフェーズや規模によって変わります。ただ、外資系・スタートアップの環境では、ある程度の「標準設計」が機能しやすい傾向があります。
国内でも、ヤフー株式会社が2012年から全社的に1on1を制度化し、離職率の低下やイノベーションの活性化といった成果を上げています。仕組みとして設計すること自体が、継続のカギになります。
スタートアップに最適な設計:週1回・30分・1対1
外資系・スタートアップでよく機能するのは「週1回・30分・1対1」です。
フラットな組織構造と高速なPDCAサイクルを前提にすると、隔週では変化への対応が遅れます。また、1時間は長すぎて準備コストが高くなりがちです。
「忙しくて時間が取れない」という声もよく聞きます。ただ、30分の対話に投資することで、週の残り時間の生産性が上がるという逆説があります。部下の迷いや障壁を早期に発見できれば、後から発生するロスを防げるからです。
場所・形式で変わる「心理的距離」
場所の選び方も、1on1の質に影響します。
- 会議室(オフライン):フォーマルな印象が強く、緊張感が生まれやすい。真剣なフィードバックや評価面談に向いています。
- カフェ・ラウンジ:リラックスした雰囲気で本音が出やすく、心理的距離が縮まります。
- ウォーキング1on1:歩きながら話すことで、対面の緊張感が和らぎます。スタートアップで取り入れているチームも増えています。
オンライン1on1では、カメラをオンにして顔が見える状態にすることが基本です。「どこで話すか」を意識するだけで、場の雰囲気は変わります。
部下の本音を引き出す1on1の進め方3ステップ
ここからが、この記事のコアコンテンツです。1on1を「チェックイン→深掘り→アクション合意」の3ステップで構造化することで、毎回安定した質の対話ができるようになります。
ステップ1:チェックイン(最初の5分)で場の温度を上げる
最初の5分は、業務の話をしないことがポイントです。
いきなり「今週の進捗は?」から入ると、部下は報告モードのまま話し続けます。まず場の温度を上げるための「チェックイン」から始めましょう。
使いやすいチェックイン質問の例:
- 「今週、一番エネルギーが高かった瞬間はいつ?」
- 「最近ハマっていることはある?」
- 「今日の調子を10点満点で表すとしたら?」
- 「今週、印象に残ったことを一つ教えて」
- 「最近、チームで面白いと思ったことはある?」
これらの質問に正解はありません。部下が少し笑顔になったり、考える顔をしたりするだけで、場が温まります。
ステップ2:本題の深掘り(中盤20分)で「現状 → 理想 → 障壁」を探る
中盤の20分が、1on1の核心部分です。「GROWモデル」をベースに問いかけを設計すると、対話が構造化されます。
- Goal(目標):「半年後、どういう状態でいたい?」
- Reality(現状):「今一番時間を取られていることは何?」
- Options(選択肢):「もし制約がなかったら、どんなアプローチをとる?」
- Will(意志):「今週、一歩踏み出せそうなことは何?」
オープンクエスチョンを使うことで、部下が自分の言葉で考えを整理できます。
また、心理的安全性を高める具体的な方法を意識した問いかけ設計も有効です。部下が「どう答えても大丈夫」と感じられる雰囲気を作ることが、本音を引き出す前提条件になります。
ストレングスファインダーを活用しているチームであれば、強みを起点に問いを立てる方法も試してみてください。「あなたの○○という強みを、今の仕事でどう活かせていると思う?」という切り口は、部下の自己肯定感を高めながら対話できます。
ステップ3:アクション合意とクローズ(最後5分)で次につなげる
最後の5分で、「今日決まったこと」を一つ明確にします。
複数のアクションを詰め込まないことが大切です。一つだけ、具体的で実行可能なアクションを合意して終わりましょう。
- 「今日の話から、来週までにやることを一つ決めるとしたら何?」
- 「次回の冒頭30秒で、今日のアクションを一緒に振り返ろう」
メモはNotionやSlackのDMに残しておくと、次回の冒頭での振り返りがスムーズになります。記録が積み重なると、部下の成長の軌跡が見えてきます。
【コピーして使える】シーン別1on1アジェンダテンプレート

ここでは、そのままコピーして使えるアジェンダテンプレートをシーン別にご紹介します。
通常週次1on1(30分・アジェンダ5項目)
【週次1on1アジェンダ】
① チェックイン(5分)
Q:「今週、一番良かった瞬間は?」
② 業務の進捗・障壁の確認(10分)
Q:「今週、一番時間を取られたことは何?」
Q:「今、壁に感じていることはある?」
③ 成長・学び・モヤモヤ(10分)
Q:「最近、学んだことや気づいたことは?」
Q:「仕事でもっとこうだったらと思うことはある?」
④ アクション確認(5分)
Q:「今週から一つ試してみることを決めるとしたら?」
⑤ クローズ
「次回の冒頭で、今日のアクションを振り返ります」
GW明け・連休後の「立て直し1on1」
GW明けはエンゲージメントが下がりやすい時期です。連休明けのチームを立て直す3ステップも参考にしながら、最初の1on1で「再点火」を意識してみてください。
【GW明け立て直し1on1アジェンダ】
① チェックイン(5分)
Q:「連休中に、仕事以外で没頭できたことは?」
② リセット確認(10分)
Q:「今週まず一番やりたいこと・取り組みたいことは?」
Q:「連休前にモヤっていたこと、まだ残ってる?」
③ 今月・今四半期の目標確認(10分)
Q:「改めて、今月のゴールを自分の言葉で話してみて」
Q:「達成するためのハードルは何だと思う?」
④ アクション確認(5分)
Q:「今週、まず一歩踏み出せることを一つ決めよう」
入社1〜3ヶ月のオンボーディング期向け
入社後最初の3ヶ月で離職する理由の多くは、マネージャーとの関係が影響しているとも言われます。この時期の1on1は、期待値の擦り合わせを中心に据えることが大切です。
【オンボーディング期1on1アジェンダ】
① チェックイン(5分)
Q:「最近、チームに慣れてきた感覚はある?」
② 期待値の確認(10分)
Q:「入社前に期待していたことと、実際はどう違う?」
Q:「自分の強みを発揮できている場面はある?」
③ 困りごと・サポートの確認(10分)
Q:「わからなくて困っていることはある?」
Q:「誰に聞けばいいかわからないことはある?」
④ アクション確認(5分)
Q:「来週、一つ試してみたいことを決めよう」
1on1の効果を可視化する改善サイクルの作り方
「1on1をやっているけど、効果があるのかわからない」——そう感じているなら、効果測定の仕組みを作るタイミングです。
エンゲージメントスコアで1on1の効果を測る
四半期ごとにエンゲージメントサーベイを実施し、1on1の頻度・質との相関を確認する方法が有効です。
チームエンゲージメントを向上させる施策5選で詳しく解説していますが、マネージャーのスコアが低いチームは、1on1の設計を見直すサインと捉えられます。
「1on1の頻度を上げたら、翌四半期のスコアが改善した」という相関が見えてくると、チーム全体で改善の意識が高まります。
1on1の記録と引き継ぎで「継続の仕組み」を作る
毎回の1on1後に、3行以内のメモを残す習慣をつけることをお勧めします。
記録のフォーマット例:
・前回のアクション:(振り返り)
・今回の気づき:(部下の発言・状態のメモ)
・次回のテーマ:(持ち越す話題)
NotionやSlackのDMを使って、マネージャーと部下で共有できる形にすると、透明性が生まれます。「見られている」ではなく「一緒に記録している」という感覚が、信頼関係の蓄積につながります。
まとめ
この記事では、1on1の進め方を外資系・スタートアップ向けに再設計するための考え方と、すぐ使えるテンプレートをご紹介しました。
- 1on1は設計が9割。 頻度・時間・場の設定から丁寧に整える
- チェックイン→深掘り→アクション合意の3ステップで、毎回安定した対話ができる
- シーン別テンプレートを活用すれば、「何を話すか迷う」問題を解消できる
- 記録と振り返りを習慣化して、改善サイクルを回し続ける
- 心理的安全性が土台。 場の設計が、部下の本音を引き出す前提条件になる
Teamieでは、チームビルディングやマネジメント支援を行っています。1on1の設計や、チームの対話を増やしたいとお考えでしたら、まずはお気軽にご相談ください。
Teambuilding のためのチームビルディングやワークショップ一覧





この記事を書いた人

納土 哲也
岐阜県飛騨高山市生まれ。
人財育成・組織開発のコンサルタントとして、100社以上の企業の人財育成・教育体系の構築を手がける。2014年にチームビルディング事業の事業責任者として立ち上げに従事。
2018年に本場のチームビルディングを学ぶため、オーストラリアへ単身留学。現地のチームビルディング企業で、ゲーミフィケーションをベースとしたチームビルディングメソッドを学び、2019年に帰国。2021年に株式会社Teamieを創業。

